おねえちゃんは、ボクをおうちへ
つれていってくれました。

おくの部屋には、もうひとり
おねえちゃんにそっくりな
白くてふわふわのおばちゃんがいました

「ちいちゃん……?
 あなたなの?」

おばちゃんはなみだをうかべながら
ボクをだきしめました。

(あれ…なんだろう?)

とてもあったかくて、なつかしい感じ。
無意識にボクのくちびるは
「おかあさん」とうごいていました。


「姉さん…その子、やっぱり…?」
おねえちゃんの言葉に、おばちゃんはうなずきました。

−−−おばちゃんは、ボクのほんとうのおかあさんだというのです。

 『ひにんしゅじゅつ』のため病院へつれていかれるとき、かごがこわれて
逃げ出したおかあさんは公園でおとうさんとであい、いっぴきだけのこどもとして
ボクをうんだのだそうです。
でも、おかあさんの『かいぬし』はとてもおこって
ボクをおきざりにしたままおかあさんをまた病院へ連れ戻して
しまったのです。
ぺるしゃねこのおかあさんがざっしゅのこどもを産むなんて、許されない
ことなのだそうです。

「ごめんなさい、ちいちゃん…
 わたし、あなたとおとうさんとの生活を選びたかったのに……」

…ボクは、えらばれなかったこども。
おかあさんのせいじゃない。わかってるのに、とてもとてもかなしくて。

「チイ茶、私たちとこのお家で暮らしましょう?
 飼い主に見つからないように、わたしがかくまってあげる」
おねえちゃんはそういって、カリカリをすこしくれました。
なぜか、このあいだのようにおいしくはたべられませんでした。

「あら、クロハチ。随分しょぼくれた
 顔してるじゃない」
「……あんたか」

 今日、オレはまたあの女に会った。
ちょっと見ないうちにまた腹がでかく
なっている。どうせこんども違う相手の
子供なのだろう。
まったく、男を替えるたびに
若くなりやがって… イヤらしい女だ。
チイが分からなかったのも無理はない。

…こんな女、金輪際オフクロだなんて
認めてやるものか。

「あの子は一緒じゃないのね。
 ……もしかして喰っちゃった?」
「………………ッ」
「ま、どーせあたしの腹から産まれた
 兄妹同士じゃないんだし、
 気にするこた無いわよぉ」
あの女はそう言って下品に笑った。
…まったく。オレはこいつのこういう所が
昔から嫌いだったんだ。

「あいつを傷つけちまったオレには…そばにいてやる資格なんてないんだ」
それを聞くとあの女はけらけら声をあげた。
「それそれ!アンタの父親も同じ台詞を吐いたっけ」
「…なに?」
「雄ってヤツはいちいち自分に言い訳をするものねぇ…
 結局一匹の雌に囚われるのが嫌なんでしょ?」
「−−−違う! オレは……」
オレは親父なんかとは違う、そう言いたかったが…何故か言葉が上手く出て来ない。
「理由なんかなんだっていいじゃないの。守るって誓ったなら、
 何があったって側にいてやればいいのに」
「……………」
「そんな台詞が出るってことは、アンタもいっぱしのオスネコになったのね。
 ま、ぐだぐだ考えないで、いろんな雌ひっかけて楽しくやんなさいよ。
 せいぜいホケンジョの人間には気をつけてね」
そういうと、あいつはでかい腹をこれ見よがしにゆさゆさ揺らしながら
繁みに消えて行った。
あの日…ゴミ箱の中で母親を呼んで
泣いていたチイに出会った日、
オレは初めて守ってやりたい小さな
ぬくもりを知った。

「よしよし、もう泣くなよ、チビ。
 今日からオレがお前の家族に
 なってやるからな」
「…ホント?
 チイノコト、ヒトリニチナイ?
 ドコニモイカナイ?」
「ああ。オレはお前の兄ちゃんだ、
 どこにも行かないよ」
「……ニイニ…
 ニイニ、ズット、チイノソバニイテネ」



…そうだ。
確かにオレは、そう誓ったんだ。

もどりゅ  まえのぺー つぎいく

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